ゆっくり


「っん」
 急くような口づけに、彼は声を漏らすと僕の肩を強く掴んだ。
 さっきまでは、余裕の表情で僕を誘ってたのに。
「んな、がっつくんじゃねぇよ」
「その気にさせておいて。今更、それはないと思うけどな」
 真っ赤にした顔を僕の肩に乗せ呼吸を整えようとしている彼に、僕は微笑いながらいった。
「うるせぇよ」
 お前はいちいち極端すぎるんだ。呟く度に、僕の肩の上で彼の顎が揺れる。それがくすぐったくて。僕は彼の肩を掴むと、優しく引き離した。未だ赤い顔を、覗き込む。
 すると。それを見られたくなかったのか、再び彼から唇を重ねてきた。僕がしたそれとは違う、ゆっくりと、誘うような口づけ。
 唇を離すと、彼は、どうだ、とでも言うように不敵に微笑って見せた。いや、正しくは、不敵に微笑ったつもりになっていた。朱に染まった頬に潤んだ目。そんなんじゃ、どんなに意地の悪い表情を作っても、説得力がない。寧ろ、僕の情を煽るだけだ。
「君が求めてるのは、そんな温いものじゃなくて。もっと激しいものなんじゃない?」
 彼がするつもりであったのだろう表情を作り言うと、僕は深く口づけた。逃れようとする舌を絡めとり、唾液を交叉させる。
「ふっ、ん…」
 鼻から抜けるような声。苦しいのか、僕の背に腕を回すと、彼は爪を立ててきた。けれど。爪を立てられるなんてことは日常茶飯事だから。僕は構わずにキスを続けると、彼をソファへと押し倒した。
 彼からすれば、やっと。僕からすれば、名残惜しく。唇を離すと、銀色の糸が二人を繋いでいた。まるで――。
「何、ニヤついてやがんだよ。気色悪ぃ」
「まるで跡部も。キスを止めるのが名残惜しいって言っているように思えて、ね」
「あ?」
「……何でもないよ」
 不思議な生物を見るかのような目をしている彼に微笑うと、距離を置いて背に回した手を離させた。
 シャツのボタンを外し、焦らすようにその滑らかな肌を指でなぞる。
「じゃあ、偶には。ゆっくりとことを進めてみようか。君がそれを、本当に望むのなら」
 きっと、耐えられないと思うけど。そう口にするよりも先に。彼に抱き寄せられた。耳元に、彼の吐息。
「跡部?」
「――――。」
「…分かったよ」
 体を離し、少しだけ不安そうに見つめる彼に微笑って頷くと僕は――。





誕生日話のかわり。遅れてごめんね。
色々意味深な感じですが。
跡部の科白と、その後不二がどうしたのか。は、読者さんにお任せ。
私としては…どっちでもオイシイんですけどね(笑)
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