A CROWN


「何か、欲しいものはねぇか?」
 ソファで寛いでいる僕の膝に跨るようにして乗ると、彼は言った。僕の首に腕を絡ませ、唇を重ねてくる。
「何で?」
「明日、お前の誕生日だろう?何でも好きなもん買ってやるよ」
 額を重ね、ふ、と微笑う。僕は溜息を吐くと、もう一度唇を重ねようとする彼を押しのけた。
「不二?」
「要らないよ。何も」
「あぁ?」
 何が不服なんだ、と言いたげな顔。とりあえず、僕は彼を膝から下ろすと隣りに座らせた。次の僕の言葉を催促するような眼に、苦笑する。
「だって、それ。君のお金じゃないでしょう?跡部家のお金だし」
「うちの金は俺の金だ」
 どう使おうと俺様の自由だろう?と言い放つ彼に、僕はまた溜息を吐いた。触れていた指を絡め、弄ぶ。
「………跡部ってさ、そういうとこ、あるよね」
「あーん?」
「僕が欲しいものは、物じゃないんだよ。CMでもやってるでしょ?物より思い出。大事なものはプライスレスって。解かる?」
 言いながら、頭の中をそのCMのナレーションが流れて、微笑えた。でも、普段はTVなんて観ないのだろう。跡部は僕を見つめたまま、何の反応も返さないでいた。
「……じゃあ、一体何が欲しいんだよ」
 暫くして、考えても解からなかったのか、彼は口を尖らせるように言った。違うか。恐らくは、考えることを放棄したのだろう。いや、もしかしたら考えてすらいなかったのかもしれない。
 ほら、また、溜息。
「物は要らないよ。だから、その代わり。明日はデートしよう?それが君から僕への誕生日プレゼント」
「……………いいぜ」
 僕の言葉が意外だったのか、彼は暫くしてから頷いた。顔には、何だそんなことか、と書いてある。でも、そんなこと、じゃないんだよね。
「但し、2人きりでだよ。移動手段はもちろん徒歩。あとは…バスとか電車かな。ああ、自転車に2人乗りって言うのもいいかもね」
 もちろん、ガタイの良い君が漕ぐんだよ?と付け加える。彼の顔は、何だそんなことか、から、何を言ってやがるんだコイツ、に変わっていた。
「だってさ。僕たちがどっか出掛けるって言うと、いっつも爺やが送迎するじゃない?そう言うんじゃなくてさ、普通の高校生としてのデートがしたいんだよ。そうだな。お昼はどっかのジャンクフードとか。……駄目?」
 不可解なイキモノを見るような眼で僕を見ている彼に、微笑いながら問う。僕のこの笑顔に弱い彼は、少し顔を赤らめると眼を逸らしながら、いいぜ、と呟いた。その後で、咳払いをし、僕を見つめなおす。
「だが、それの何処がプレゼントになるんだ?」
「僕の為だけに君が時間を使ってくれるんだよ?それって素敵なプレゼントじゃない」
「……それなら、いつもだってそうしてるじゃねぇか」
「違うよ。いつもは互いが互いの為に時間を使ってるじゃない」
 というか、僕が彼の為に時間を使ってるような気がするけど。
「今回は、君が僕の為に時間を使うの。わざわざ生活のレベルを落としてね。そこに意味があるんだよ」
「………そういうもんなのか?」
「それじゃ、駄目?」
「まあ、お前がそうしたないのなら文句はねぇが」
 空いている手で頭を掻きながら呟く。OKはしてくれたけど、その顔はまだ理解してくれていないみたいだ。まあ、こういう生活をしてるんじゃ、いつまで経っても理解は出来ないだろう。というか、また、理解することを放棄しそうだけど。
 彼の理解がどうであれ、取り敢えず彼からの承諾は得たんだ。後は僕次第ってことだな。
「さて。じゃあ、早速買い物に行こっか」
 彼の指を解き、勢いをつけて立ち上がる。
「…何だ。なんだかんだ言ってもやっぱり欲しい物があるんじゃねぇか」
 差し伸べた僕の手を取り立ち上がると、彼はニヤリと微笑いながら言った。その顔に、僕は同じようにニヤリと微笑い返すと首を横に振った。
「違うよ。今ならまだスーパーがやってるはずだから。明日の朝食の材料を買いに行くんだよ」
「あーん?」
 僕の言葉に、彼が不思議そうな顔をする。何?また珍獣扱い?
「だって、明日は丸一日、僕の為に時間を使ってくれるんでしょ?それだったら、朝食は君んとこのシェフが作ったのじゃなくて、僕にとっての普通の朝食を摂らないと。特別、僕が朝食を作ってあげるからさ。ね?」
 得意の笑みを見せて、彼の顔を覗き込む。また少し顔を赤らめた彼は、舌打ちをすると、僕から眼を逸らした。
「……仕方ねぇな」
 呟きながらも繋いだ僕の手をしっかり握った彼の口元には、笑みが浮かんでいた。





怪しいのは最初だけって言う(笑)
『物より心』であってる?それとも『物より気持ち』?うろ覚え。(思い出だという事を思い出した。)
ママチャリに乗る跡部を見てみたい。
ひらひらエプロンを着た不二(攻)を見てみたい。
裸エプロンの跡部を見t(oC=(__;バキッ


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