CRIMSON


「別に明日でも良かったんじゃねぇか」
 ソファに座る僕の膝に向き合うようにして座ると、彼は言った。彼がするよりも先に、その首に腕を絡めてキスをする。
「僕も本当は明日の方がいいんだけどね」
 そうもいかないんだ。苦笑してまたキスを交わす。唇を離した彼ははてなを浮かべた顔で僕を見つめた。クスリと微笑い、額を合わせる。
「でも、明日の夜は家族で過ごさなきゃ。折角の誕生日なんだからさ」
 金持ちというだけあって、彼の家族はなかなか忙しい。その為、家族全員が揃って食事をすることなんて殆んどない。だけど、誕生日は別。全員が彼、跡部景吾の為に集まる。そんな家族水入らずの場にお邪魔する程、僕は馬鹿じゃないし、彼に飢えてはいない。部活を引退してから、暇を見つけては会ってるわけだし。
「夜はそうでも、その前とかあんだろ。俺様の誕生パーティー、何でこねぇんだよ」
「さて。何故でしょう」
 クスリと微笑う僕を暫く見つめていたが、彼は諦めたように溜息をつくと膝から降りた。僕の隣に寄り添うようにして座りなおす。眠いのだろう。彼は口も隠さずに大きな欠伸をすると、僕の肩に体重を掛けるようにして寄りかかってきた。落ちないように気をつけながら彼の肩に腕を回し、その髪を撫でる。
「見たくないんだ」
「あーん?」
 ポツリと呟いた僕の言葉を拾うと、彼は肩に寄りかかったままで見つめてきた。その触れる髪がくすぐったくて、思わず微笑う。
「何が見たくねぇんだよ」
「君が、僕以外のヒトと楽しげにしている姿をさ」
 彼に飢えてはいないけど。それは二人きりでいるときの話だ。家族は仕方がないとしても、僕以外の他人と彼が楽しいときを過ごしてるなんて考えただけで腹立たしいし、見たらきっとそいつを殴り倒してでも彼と引き離そうとしてしまうだろう。
「案外、大変なんだよ。普段学校に行ってる時に、君のことを考えないようにするのはさ」
 苦笑しながら言うと、彼は怪訝そうな顔をした。その後で、僕から眼をそらすようにして離れてしまった。僕の膝に足を乗せるようにして、うつ伏せに寝転ぶ。
「何?」
「俺は四六時中不二のことを考えてるのに、てめぇはそうじゃねぇんだなって思ってよ」
 機嫌の悪いときの声。僕は溜息をつくと、彼の足を丁寧に降ろした。立ち上がり、彼をひっくり返す。
「てめっ…」
 仰向けにされたことに抗議の声を上げようとしたその唇を塞ぐと、僕はそのまま彼の上に圧し掛かった。シャツの上から、撫でるように彼の躰に触れる。
「そうじゃないよ。放っておくと君のことばかり考えちゃうからさ。考えて、考えて。今頃君は僕以外の誰かときっと楽しく授業を受けてるんだろうなって思って、腹立たしくなる。だから、考えないようにしてるんだよ。そのまま放っておいたら、嫉妬に狂っちゃいそうでさ」
 矛先がその誰かに向いているときはまだ良いんだ。でも、もしそれが君に向いてしまったら。
「もしかしたら僕、氷帝(君のところ)まで押しかけて、みんなの前で君を犯しちゃうかもしれないな、なんて思ってね」
 クスクスと微笑いながら、彼のシャツのボタンを外す。その手つきがいつもより荒かったのは、あの時のもやもやした気持ちが少しだけど僕の中に蘇っていたからだろう。
「それはそれで面白そうだな」
 ずっとされるがままになっていた彼が、その言葉と共にニヤリと微笑うと、僕に手を伸ばしてきた。引き寄せられ、唇が深く重なる。
「あ、とべ?」
「まさかてめぇがそんな風に考えてるとはな。てっきり、俺ひとりが独占欲が強いのかと思ってたぜ」
 クツクツと微笑うと、彼はそのまま僕を強く抱き締めた。耳元に、彼の吐息を感じる。
「嫉妬に狂った天才ってのも、それはそれでなかなかそそるな」
 囁いて、僕の顔を覗き込む。誘うようなその眼に、僕は苦笑した。
「……決めた。不二。お前、明日のパーティーに来い。夜も泊まれ」
「え?」
「それでプレゼントは勘弁してやる」
 明日の夜が楽しみだ。ちょっと前までの不機嫌さは何処へやらの口調で言うと、彼はまた、僕にキスをしてきた。舌を絡めながら、不図思いつき、視線を彼から外す。
「いいけど。明日は駄目だな」
「あーん?」
 唇を離し言う僕に、彼は眉間に皺を寄せた。そこに唇を落とし、壁にかかっている時計を見る。
「日付、もう変わってる。今日、だよ」
「……そんなことか。生憎、俺様は寝なけりゃ日付が変わんねぇんでな。俺の中では誕生日はまだ明日だ」
「だったら、今日からその習慣を改めてよ」
「何でそんなことしなきゃなんねぇんだよ」
「だって。今夜はきっと眠らないから。日付、変わらないままになっちゃうよ?」
「ばっ…」
 馬鹿じゃねぇの。顔を真っ赤にして呟く。その顔が可愛くて、僕は微笑った。深呼吸をし、真っ直ぐに彼を見つめる。
「Happy birthday、跡部」
 囁いて、キスをする。唇を離した彼は、まだ赤い顔で、ああ、とだけ呟いた。





いや、寧ろこれから『CRIMSON』の世界(笑)。あれです。タイトルはチャゲアスの曲です。
つっても、聴きながら書いていただけなので、曲調と物語の雰囲気は合いません。だってもっとテンポ速い曲だし。
不二跡は不二切の次にエロいCPかな、なんて思ってます。エロいっていうかなんだろ。肉欲旺盛な(?)。あ。艶っぽい感じ。そうそう、それね。
でも、不二跡エロは書けないんですよね、何故か。
うっかりしちゃうんだけど、うちの不二跡って幼馴染ではないんですよね。うん。
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