コラッ!


「ほら、跡部。起きて」
 読み終えた本をテーブルに置くと、僕の膝の上に投げ出された彼の足を揺すった。ん、と艶っぽい声を出し、彼が眼を開ける。
「なんだ。不二じゃんよ」
「なんだはないでしょう。ほら、起きて」
 眼を擦っていない方の手を掴み、思い切り引き寄せる。欠伸をしながら上半身を起こすから。僕はそれをいいことに、彼に深く口づけた。
「目、覚めた?」
「……あ、ああ」
 予想もしていなかった所為なのかなんなのか。彼は珍しく照れたようだった。仄かに赤くなった顔を誤魔化すように、コホンと咳払いをする。
「で?」
「ん?」
「俺様の眠りを邪魔して。どういうつもりだ?」
「どういうつもりって…」
 僕の首に腕を回し、猫のように僕の頬に額を寄せてくる彼に、僕は苦笑した。彼の肩に腕を回し、その髪を梳く。
「本も読み終わったし、帰ろうかなって思ってさ」
「……なん、だと?」
 僕の言葉に彼は少し驚いたような表情を見せたあと、明らかにむくれた。その顔に、また苦笑する。
「てめぇは本を読む為に俺様んとこに来てんのかよ」
「違うよ。でも君が寝ちゃったから。疲れてるみたいだったし、起こすのも可哀相かなと思って、本を読み終えるまで待ってたんじゃない」
「俺様は疲れてなんかねぇよ」
「じゃあ、僕が来て早々、寝ないでよ」
「仕方ねぇだろ。てめぇの膝は眠気を誘うんだよ」
 まぁ、これなら眠気なんか襲ってこねぇんだがな。呟くと、彼は僕から手を離し、立ち上がった。どうするのかと思って見ていると、案の定というかなんと言うか、彼は僕の膝の上に向かい合う形で座った。僕の頬を両手で挟み、啄ばむようなキスをする。
「なぁ、いいだろ?」
「駄目」
 きつく抱き締めてこようとする彼の胸を押し退けながら、僕は言った。僕に抱きつけないことが分かったのか、彼は顔を膨らすと、代わりに腕を伸ばして僕の髪に触れた。求めるような眼で、僕を見つめる。
「こーら。だから駄目だってば」
 その艶っぽい表情に惑わされる前に。僕は彼の手を退かすと、その体をソファに降ろし立ち上がった。けど。彼は僕の腕を掴んで離してくれなくて。
「こ――」
「泊まってけばいいだろ」
 今にも泣き出しそうな眼に。あーあ。駄目だったか、と心の中で呟いた時には、僕は彼の手を握り返してしまっていた。
「分かった。僕の負けだよ」
 苦笑しながら言い、ソファに腰を降ろす。
「どうせ俺様には勝てねぇんだから、素直に負けときゃ良かったんだよ」
「そう、かもね」
 再び僕の膝の上に座ってきた彼に呟くと、僕たちは何となく微笑った。





365題ネタ。
跡部様は不二の膝に足を乗せて眠るか、不二の膝の上に向かい合ってイチャつくかのどちらかです(笑)
最近の不二跡はめっきり甘いですね。あはは。
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