コンビニ


 真夜中に、ひっそりと家を抜け出す。向かう先は、いつものコンビニ。
 約束の時間より僕はいつも少しだけ遅れるようにしている。そうすると、絶対に時間に遅れない彼が先にコンビニに来ているから。
 どう頑張っても彼と結びつかないその場所で、物珍しそうに品物を見たり雑誌を立ち読んだりしている彼の姿を見るのが好きなんだ。
 ただ、その事実を告げると、きっと彼は寒空の下、コンビニの外で僕を待つことになるだろうから。
「跡部」
「遅ぇんだよ。てめぇはいつも」
「ごめんごめん」
 だから、彼がどんなに怒っても、責めても、僕は理由を言わないんだ。
 でも、と思う。彼も彼だ。隠れて見てはいるつもりだけど。愛があれば見つかるくらいの場所にいるのに。雑誌を読み耽って僕に気づかないなんて。よくよく考えてみると、ちょっと、淋しい。
 ……まぁ、良いけど。
「買わないの?」
「昨日買った」
「じゃあ何で読んでるの?」
「てめぇが遅れるからだろ」
「あ、そっか」
 むくれながら雑誌を棚に戻す彼に、僕は微笑うと、その手をとりしっかりと握った。それだけで、彼の頬がしぼむから、面白い。
「なに微笑ってんだよ」
「素直な跡部、好きだよ」
「……っ。るせぇよ、バカ」
 ほら、顔が赤くなる。だから、好き。
「いいから、さっさと行くぞ」
 覗き込む僕から顔を背け、彼が強く手を引く。はいはい、と微笑いながら言うと、僕は彼に寄り添った。手を、強く握り返して。





365題ネタ。

話の流れ上、書けなかったこの話の設定です↓
 コンビニの駐車場には、彼を乗せてきた車が待機している。僕はこれからその車に乗り込んで、彼の家へ行く。流石に毎日彼の家に泊まるとなると、親が不審がるから。だから、僕は夜中に家を抜け出して、そして朝早くに帰ってくるという生活を送っている。誰にもバレていないかというと、姉さんにはバレているのだけれど。全てを話したら、逆に協力してくれると言ってくれた。

跡部は…コンビニに行くのかなぁ。なんか、買い物とかしてるイメージがないんだけど。全部お取り寄せって感じ。
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