「オレって、やっぱ天才的ぃ?」
なんてキメて見せると、いつも真田に、その恥ずかしい台詞はどうにかならんのか、って怒鳴られる。皆も、呆れてる。
でも、オレは止めない。目標を達成するまでは、ぜってー言い続けてやるって誓ったし。
目標は何かって?まぁ、それはアレだよ。何て言うか…。
「不二に勝るとも劣らない才能の持ち主だ」
「これが氷帝の天才だ」
そんなカンジ。
あ。分かんね?だから、オレも天才って呼ばれたいって。そゆこと。
別に、天才なんて呼ばれなくても、隣に並べればそれでいーんだけど。それって無理じゃん?第一、試合してねーし。
「嘘吐き。不二はD2に出るって言ってたじゃねーかよ」
「……その可能性が高いと言っただけだ。S2に出る可能性もあると言っただろう」
「……………」
「悪ぃっスね、丸井先輩。っ痛」
得意げに言う赤也があったまにくっから、一発殴ってやった。本当は、不二にボールを当てたときに殴ってやりたかったんだぜ。でも、ま、今更だし、その上負けたから、許してやるけど。
って。ここまでくれば分かると思うけど。そう、オレは何を隠そう、青学の天才、不二周助のことが好きなんです。
好きになったのは去年のことで。試合してるその姿に、惚れた。で。どうにかして知り合いになろうと思ったんだけど、そん時の青学は弱くて。オレたち立海と当たる前に負けてた。つっても、手塚と不二は勝ってたけど。
だから、今年。関東の決勝で当たるのを楽しみにしたってのに。うちの参謀は…。
「……どうした?不満そうだな」
「べっつにぃ」
ま、試合後に握手は交わしたし、一応記憶に残ったかな、なんては思うけど。
でもやっぱ、試合してねーから、話しかけづらいってのが本音。
噂によると、不二は手塚とデキてるらしい。それは2年のときに訊いたんだけど。未だ囁かれてるってことは、きっとホントのことで、そのときからずっと関係は続いてるんだろう。
これだと、何の関係もねぇオレがその隣に並ぶなんてことは、まず、無理。
だからせめて肩書きみたいなもんだけでも一緒になれればいいな、なんて。そうすれば多少は気にかけてくれっかな、なんて。1年前のオレは思いついて。それからずっと努力してるわけなんだけど。
「なぁなぁ、オレって天才的?」
「あー。天才的なんじゃないっすか?ま、的ってなだけで、天才ではないっスよね。第一、丸井先輩って努力家でしょ」
「……………バカ也め」
あーあー、分かってるっての。オレが天才じゃないってことは。努力家だし。
でもそれを言うなら、氷帝の眼鏡だって、不動峰の2年だって、天才とは言いがたいんじゃね?つぅかあいつらが天才ならオレも天才じゃね?
なーんて思っても、周りにいる奴等がこいつらじゃ。やっぱオレの天才的なプレーも埋もれるってんだよな。まぁ、こいつらが居たから、不二の試合を見れるわけでもあるんだけど。
そんなわけで。真田にどんなに怒鳴られても、周りにどんなに呆れられても、オレは今日もキメ台詞を吐くわけです。
だから、ま。オレにこの台詞を吐くのを止めさせたけりゃ、さっさとオレを天才と呼べってカンジだよね。ホントに。
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