「それにしても。よく眠るなぁ」
くるくるとその髪を指に巻きつけるようにして弄りながら、呟く。
彼が僕の部屋を見てみたいというから。じゃあ、何か映画でもレンタルして観ようかと。借りてきたんだけど。
ベッドに並んで腰を下ろすなり欠伸を出し始めた彼は、映画が始まってものの10分で、深い眠りについてしまった。
初めは、僕の肩に頭を乗せてたんだけど。ずるずると滑っていって。今は膝の上。
変な風にカラダを捩じってるから、寝づらくないの?なんて思ったけど。この爆睡振りじゃ、寝づらくはないようだ。
「映画、終わっちゃったんだけどなぁ…」
眠ってしまった彼の顔を見ていると、起こす気にはなれず。だからと言って、彼が起きてから続きを見たとしてもまた眠ってしまうだろうから。僕は、1人で映画を見終えてしまった。
「……暇」
彼の髪を弄りながら、溜息。だけど、その後には、自然と口元が緩んでしまう。彼の寝顔は、まぁ、何て言うか。猫だとかなんだとかって動物の寝顔と同じ効果があるらしい。
だから、なかなか彼を起こすことが出来なくて。気がつくと、帰る時間になっている、何てことが殆んどだ。
まぁ、テニスをしてれば。起きててくれるんだけど。
それ以外は…。
「歩きながらでも寝れるって、凄い特技」
呟いて、その鼻を摘んでみる。と、暫くして彼は、僕の手を取った。そのまま、指を絡ませてくる。
「慈郎、起きた?」
「……ふじぃ。温かい…」
「温かいって。今、真夏なんだけどなぁ」
繋いだ手を強く握り、自分の頬に当てる彼に、僕は苦笑した。じんわりと、汗ばんでくるのが分かる。
いつもこんな風だから。跡部とか忍足とかに、退屈じゃないのか、と訊かれてしまうのだろうけど。まぁ、こういうのもいいんじゃないか、と僕は思ってる。
僕としては、傍に居られればいいわけだし。それはきっと、彼も同じだと思う。
ただ、ちょっと、今は。
「足、痺れてきてるんだけどなぁ」
彼に退いて欲しいんだけど。でも、この状態で彼に起きられても、僕はろくに相手をしてあげることは出来ないんだろうな、なんて。
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