「っ」
 首筋に、噛み付かれて。オレは動けなくなった。そのことに、不気味に微笑うと、不二サンはオレの恐怖を味わうかのように、ゆっくりと唇を離した。オレと目を合わせ、ニィ、と口元を歪めて微笑う。
「変態なんじゃないっスか?」
「まぁね。でも、君にだけは言われたくないかな」
 ほら。囁くように言うと、不二サンは足でオレのそこを刺激した。恐怖しているし、それ以上に嫌悪しているはずなのに、オレのそこは熱を持ち、そして口からは刺激される度に熱い吐息が漏れていた。
「ロープ。持ってきたんだけど。縛る必要は無いみたいだね。それとも、縛って欲しい?」
 クスクスと微笑いながら言うと、不二サンは壁に押し付けていたオレの肩を、今度は地面に向かって投げるように押し付けた。石灰塗れのマットから、白い埃が舞い上がる。
「いつもいつもこんな所で。見た目、綺麗好きそうなのに、意外っスよね」
「それも、君には言われたくないかな。サドっぽいのに、実はマゾだなんて」
 埃で咽るオレの口を強引に塞ぐと、荒々しい手つきで服を剥いで行った。抵抗しようとした瞬間、唇の端を噛み切られる。
「やっぱり、美味しいね。赤也の血」
「……吐き気がするんで、名前で呼ばないでくれないっスかね?」
「本当は、僕か赤也の部屋でしたいんだけどね。そういう所じゃ、赤也が満足しないでしょう?犯されることに快楽を覚えるような体なんだし」
 ねぇ、赤也。わざとらしく、はっきりと耳元で名前を囁くと、不二サンはそのままオレの耳を舐め、歯を立てた。
「ひっ、ぁ」
 思いもかけず強く噛まれ。オレの体は再び強張った。それをいいことに、不二サンの手が好き勝手にオレの体の上を這いずり回る。
「やっぱり、マゾだよね。赤也って」
「不二サンは、サドなんスね」
「心外だなぁ。マゾな赤也に合わせてるだけだよ。ほら僕って、優しいから」
「……っどこが」
 悪態を吐くオレに、こういう所が、と愉しそうに呟くと、オレのそこを服の上から強く握った。
「う、あっ」
 痛みに声を上げ、顔を左右に振る。それを見た不二サンは、クスリと微笑うと、余計に強くそれを握った。
 分かってる。痛みに上げた声の端に、熱いものが混ざってるってことくらい。止めて欲しいはずなのに、更なる刺激を求めて腰が振れちまうってことくらい。恐怖も、痛みも、オレの中では快楽の一種でしかねぇんだ。
 けど、そんなの認めるわけにはいかねぇから。
「変態っ。離せよ」
 鎖骨に歯を立てオレの好きな刺激を与えてくるその頭を掴むと、オレは快楽に呑み込まれ始めた体で、出来る限りの抵抗をしてみせた。それが無駄だと、自分の望んでいないことだと理解していながら。





タイトルが思い浮かばなかったので、お題そのままで。
えーっと、365題『歯』のコメントから。
偶には不二→切ってことで。ええ。書いてみました。
強姦なんだか和姦なんだか…。
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