MARRY ME?


 嫌いだとハッキリ言われたあの日から、ボクはキミのことが好きになりました。
 だから…。
「いい加減、裕太に代わってくれないか。居るんだろ?そこに」
 ウンザリした声で言われたって全然平気なんです。
「んふっ。残念ながらここに裕太クンはいません。何度も言っているでしょう?」
「嘘を吐くな」
「本当です。ボクがキミに嘘をつくわけないじゃないですか」
 そう。この場には彼はいない。もう少ししたら、来るかもしれませんが。
「ああ。もしかして、あれですか。キミの本当の目的は、ボクだったりし…」
「死ね」
 ボクの声に被さるようにして、凍てつくような声が聴こえた。
 残ったのは電子音。
「………んふっ。そういうつれないところも好きですよ」
 行く宛てのない言葉を吐くと、ボクは受話器を下ろした。
「あ。観月さん、今の電話…」
 息を切らせてやってきたのは、彼の愛すべき弟クン。うーん、残念ですね。もう少しだったのに。
「ただの間違い電話ですよ」
「いや、でも。おれ確かに放送で呼ばれて…」
 今までおとなしくボクに従っていたのに、最近の弟クンはやたらと口答えをする。まあ、それくらいのほうが、ボクのライバルとしては相応しいのですが。
「裕太クン」
「はい?」
「キミのお兄さんはなかなか手強いようですね」
 でも、必ず手に入れて見せますよ。言葉にはせず、ボクは目線でそれを彼に告げた。宣戦布告ってやつです。けれど。
「そりゃぁ、まあ…」
 ボクの思いは通じなかったらしい。彼は照れたように鼻の頭を掻いた。キミのことを言っているわけじゃないんですよ。全く、これだからバカは困りますね。
 呆れ顔で彼を見る。彼はまだ照れているようだった。バカを相手にするほどボクは暇人じゃないけれど。その、自慢のお兄さんというキミの態度は少々、鼻につきますね。
「裕太くん」
「は、はい」
 厳しい口調で呼ぶと、彼は背筋を伸ばして『気を付け』の姿勢をとった。その姿が妙に滑稽で、ボクは思わず笑みを溢した。
「ボクが手強いといっているのは、テニスについてではなく、恋愛についてです」
「………へ?」
「んふっ。待っていなさい。必ずキミにボクのことを『お兄さん』って呼ばせてあげますから」
 含みのある笑いを彼に残すと、ボクは鼻歌をうたいながらその場を後にした。

「……で。それはどういう意味だい?」
 ボクの部屋。彼は我が物顔でベッドに座ると、敵意剥き出しの眼をボクに向けた。彼が言っているのは、ボクがこの間、弟クンに言ったこと。『お兄さん』と呼ばせると。それを、どこをどう勘違いしたのか、弟クンは彼の所為でボクの頭が可笑しくなったと思い込み、彼に電話で問いただしたそうだ。そして、弟にはめっぽう弱い彼は、『ボクを治療する』という名目でこの寮にきた。まぁ、彼にはそんな気はさらさらないようですが。
 ……バカはバカなりに、少しは役にたつみたいですね。感謝しますよ、裕太クン。貴方のおかげで、ボクはこうして不二周助と会ってお話することが出来るのですから。
「んふっ。突然来て何かと思えば、そんなことですか」
 ボクは彼に紅茶を差し出すと、向かいに座った。彼はまだ、ボクを見ている。
「……そんなに見つめないでくださいよ。照れるじゃないですか」
「死ね」
 恐らくボクにしか聞かせたことのないだろう低い声で言うと、彼は立ち上がり、ドアノブに手をかけた。ボクは慌てて、部屋を出ようとする彼の服を掴んだ。
「ま、待ってください。ちゃんと説明しますから」
 逃げられないように、必死で引っ張る。
「……服、伸びるんだけど」
 彼に言われて、ボクは慌てて手を放した。
「あ。………スミマセン」
 伸びきってしまった服に申し訳なくて。うな垂れる。彼が溜息をつくのがわかった。
 また、逃げられてしまう、と思った。
 けれど、彼は開けかけのドアを閉めると、ベッドに座り、冷めはじめた紅茶をすすった。
「………不二クン?」
「紅茶。勿体無いから」
 呟くと、彼はまた、紅茶をすする。素っ気無い言い方だけれど、ボクは彼の優しさを凄く感じた。ボクも彼の向かい座り、紅茶をすする。彼との新婚生活はきっと、紅茶の香りのするものになるでしょう。根拠はないけど、何となく、そんな予感のする今日この頃です。
「悠長に飲んでないで、さっさと説明してくれないか?」
 彼の声に、ボクは夢から一気に現実へと引きずり出された。もう少しくらい、幸せに浸らせてくれても良いのに。まあ、近い将来、この幸せが夢ではなくなるわけですから、良いんですけれどね。
「………説明。してくれないなら、帰るけど?」
「ああっ、します。説明、しますから」
 カップを置き、立ち上がろうとする彼を制すと、ボクは咳払いをした。
「えっと…だから、ですね。それは…」
 駄目です。言えません。そんな、面と向かっては。やっぱり、恥ずかしいです。
「……早くしてくれない?」
 彼の苛立ちをヒシヒシと感じる。なんか、この部屋全体に暗雲が立ち込めているようで。このままだと、彼からの雷を食らうのは必至。下手をしたら、もう二度と寮には電話をしてくれなくなるかもしれません。
 ええい。ままよ。
 ボクは大きく深呼吸をすると、彼の手をしっかりと握った。
「好きです。不二クン。ボクと、結婚してください!」
「………。」
「………………。」
「………………………死ね。」
 その彼の言葉を最後に、ボクの視界は真っ暗になった。

 んふっ。そういう短気な所も、好きですよ。





………っ死ね!(笑)
き〜も〜い〜っ。自分で言っててアレだけど、観月、き〜も〜い〜っ!
ある意味最強よね、観月。思い込みの激しいヤツって最強だよ。うん。
だって、本気で不二クンと結婚できると思ってるからね。日本の法律じゃ無理なのにι
観月クンの特徴として→本人を目の前にしなければかなり強気。目の前にするとぽ〜っとしちゃって、弱気(乙女?)になる。
うわっ。キモッ(笑)。でも、なんか好き(爆死)

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送