きらきら


 危ない。そんな声が飛んできて。それとほぼ同時に、ガシャン、って直ぐ背後で大きな音がしたんだ。
 突然の出来事で。何が起こったのか分からなかったけれど。きらきらと太陽の光を反射しながら、割れ落ちる窓硝子を見て。綺麗だ、と。それだけ、思った。
 まるでスローモーションでもかけられたかのような風景だったのを覚えてる。
 そして、その綺麗だったシーンをもう一度再現したくて。あの時はベタに野球のボールが割ったのだけれど。僕は何度も硝子を割った。最初は、石。次に鉄の棒。そして、素手。
 どれで割れば一番綺麗に見えるのか。色々試したけど、どれもこれも綺麗だった。硝子を割る道具は、何でもいいらしい。
 ただ、割られる硝子は、綺麗じゃないといけない。
 汚れを全て拭き取り、太陽の光を目一杯に浴びさせて、割る。そうじゃないと、きらきらと輝いてはくれないんだ。
 それで、気付いた。綺麗なモノを壊す時。それ以上に綺麗になるって事。
 だから僕は。まず、そのままでも綺麗なモノを探す事にしたんだ。
「で、見つけたのが、君。それと、裕太」
 狂気を含んだ目でボクを見つめると、彼は強引に唇を重ねてきた。抵抗しようにも手足は縛られていて、ボクはただそれを受け入れる事しが出来なかった。目の端で、それをじっと見つめている者の存在を確認する。
「裕太。ちゃんと見ておくんだ。君の尊敬する観月を、君の大好きなお兄ちゃんが犯し殺す所を。……君は、せいぜい僕の手の中で喘ぎ苦しむといいよ、観月」
 クスクスと不気味に微笑うと、彼はボクの肌に舌を這わせた。服なんて、とっくに切り裂かれている。
 裕太クンは、椅子の上。脱力したように腰掛け、何も映していないかのような目でベッドにいるボクたちを見ていた。
 一体、どんなことをしたのか容易に想像はつくが。どうやら彼の真っ直ぐで綺麗だった精神は、既に壊されてしまったらしい。この、ボクの上で無気味に微笑う悪魔によって。しかも、それでもまだ足りず、これから更に、もっと粉々になるまで彼の精神を壊そうとしている。
 ボクを、使って。
「やっぱり、君の体は綺麗だね。何故君に裕太みたいな綺麗な精神が宿ってないのか。それだけが悔やまれるよ。そうしたら、もっと綺麗に壊れてくれただろうに」
 ボクの服を切り裂いたナイフを手にとると、そのままボクの胸に十字を書いた。遅れてやってくる痛みに、声を上げる。その事に、悪魔は満足げに微笑った。血を舐めとるようにして、ボクの胸に出来た大きな十字を舌で辿る。
「裕太は思った通り、なかなか綺麗に壊れてくれたよ。まぁ、仕上げはこれからだけど。君も…君は、僕の想像以上に綺麗に壊れてくれそうだ」
「はっ、ぁ」
 彼の昔話を聞かされる前に無理矢理に飲まされた薬の所為で、自分の意思に反して甘い声が漏れる。体が、熱くなる。
「綺麗な血。もっと見たいけど。それは仕上げだから」
 指で掬ったボクの血を愛おしそうに眺めると、彼はそれをボクの顔に擦りつけた。同じように唇にも擦り付け、それを拭うように彼の舌が触れる。
「まずは、死ぬほど犯してあげる。それで本当に死にそうになったら。このナイフで切り刻んで殺してあげるから。大丈夫。きっと、君の血はあの硝子みたいに綺麗にきらきらと輝くよ。陽の光も浴びさせてあげるから」
 クスクスと不気味に微笑いながらそう言うと、彼は熱を帯びたボクの体を壊す為に、指を進めて行った。





そういう気分だったので。
観月の躰は綺麗でも、精神は薄汚れてそうだからなぁ(笑)
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