街灯はあるけれど、間隔が広すぎて暗い道を、独りで歩く。
 こんな夜はいつも、今頃アイツは何をしてるんだろうか、なんて。考えても仕方の無いことばかりが浮かんでくる。
 今日、久しぶりに見た不二は、最後に会ってからそれほど時間が経っていないというのに、随分と変わったように思えた。まぁ、手塚くんが帰ってきたのだから、変わるのも当たり前、か。
 試合も負けたし。何もいいことなし、か。
 溜息を吐き、宙を見上げる。街灯が少ない所為で、ここは星がよく見えるはずなのに、宙は真っ暗だった。綺麗だった満月も、消えている。
 さっきから吹いている湿った風は。ああ、そうか。雨だ。
 少しだけ歩調を早め、相変わらず暗い道を、独りで歩く。
 幼い頃はこの暗さが怖かった。それを知っているから、不二はいつも俺と手を繋いで帰ってくれた。なんて、遠い昔の話だ。けど、遠い昔の話だけど、俺にとっては大切な昔。
 不二に言ったらきっと怒るだろうけど。やっぱり俺は、他の誰かを見ている今の不二よりも、俺だけを見ていた昔の不二の方が好きだ。今の不二を見ているだけ、傍に居ても近くに居ないような辛さを味わっているだけ、余計に想い出が綺麗になる。そして、想い出が綺麗になるだけ、余計に強く不二を想ってしまう。なんて、見事な悪循環。
 あの日の不二はもう何処を探しても居ないんだって、どうしようもないくらい分かってる筈なのに。
 もう一度溜息を吐き、宙を見上げる。と、頬を伝う雫。そして、まるでそれを切欠にしたかのように、宙からは冷たい雨が――。





恐ろしく短いですな(苦笑)
365題『雫』にコメントをくださったかたに。久々すぎてしまってごめんなさい。不二塚前提でごめんなさい。
SURFACEの曲が基になってます。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送