ROMAN
 マンションの重い扉を開けると、私の部屋には似つかない空気を纏った男がいた。
「どうしたんだ」
 尋ねる私の手から鞄を取り上げると、逆の手で首に手を回してキスをしてきた。流れるようなその動きはいつもと何も変わらないが、回した手の感触がやはりいつもとは違う雰囲気がそこに存在しているのだと示している。
「お帰りなさい」
「君は」
「今日榊さん、誕生日でしょう?だから」
 だからなんだというのか。その先の言葉を聞きたかったのだが、彼は含んだように笑うだけで先を続けようとはしなかった。
 一体何を企んでいるのか。気になりはしたが、このまま玄関に佇んでいるのも可笑しいので、私は観念して靴を脱いだ。彼の手がまた私に伸び、スカーフをするりと抜き取っていく。
「榊さんが作るものに味は到底及びませんが、一応、料理も作ったんですよ。あと、ケーキも。といってもケーキは家で姉さんと一緒に作ったんですけど」
 でも。スカーフを持ったままの手で私の手を掴むと、彼はまた意味の分からない笑みを見せた。私を見つめたままで、持ち上げた私の手に唇を落とす。
「ねぇ、榊さん。お風呂にします?食事にします?それとも……」
 それとも。その続きの言葉は聞けなかった。気がつくと私は彼の手を強く引き、深く唇を重ねていた。彼の手から鞄を落とし、自分の体に巻きつけさせる。私の手は露わになっている彼の背に回り、残り半分を隠している布を取り払うために繋ぎ目を解こうとした。
「ちょっと、榊さん」
「その恰好で、待たせるのか?」
「エプロン取ったら、いつもと同じになってしまいますから。今日はギリギリまで、このまま。それに、全裸になる必要があるのは、どちらかといえば榊さんの方でしょう?」
 背に回したはずの彼の手が、いつの間にか私の胸元でシャツのボタンを外している。抵抗をせずにいると、彼は私の前も寛げ、跪いた。
「不二」
「若妻にされてる感じ、しません?」
「……妻は、私に入れたりはしないだろう」
「ああ。それもそうですね。でも、そこは譲りませんけど」
「誰も譲れなどとは言っていないが」
「なら、よかった」
 彼が言葉を吐き出すたびに、私の物に息がかかる。そんな微かな刺激だけでは当然足りない私は、彼の髪を掴むと、半ば強引に咥えさせた。つもりだったが、髪を掴んだ時点で、彼の方が引き寄せられるように私の物をその口に咥え込んでいた。
 ここは、こんなことをする場所ではないのだがな。そうは思いながらも、私は彼を制止することは出来なかった。
 彼の口からは粘着質な水音が零れ、私の口からは熱い吐息が零れていく。その状況を僅かに残った理性で遠く眺めながら、私は最初の絶頂に達した。




男のロマン。て、受けの人もやっぱり裸エプロンやってもらいたいのかな。それともやりたいのかな?
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