kettle-holder


「何をそんなに怒ってるの?」
「さぁな。そのくらい自分で考えろ」
 俺に絡み付いてくる不二に溜息を吐きながら、俺は構わず本を広げた。それでも覗き込んでくる不二の額を、強く押しやる。
「なんてね。本当は知ってるんだ。あれでしょ?この間、僕と杏ちゃんがデートしてたから。妬いてるんだよね」
「誰がっ…」
 妬いてなんか、と続けようとした唇を、不二に塞がれた。
「もっと正直にならないと駄目だよ」
 ね、と不二が微笑う。正直だ、と答えようと思ったが、俺の頬が赤くなってしまっていたため、言えなくなってしまった。本を高く持ち、顔を隠す。深追いしてくるのかと構えたが、不二はそれをせずにあっさりと俺から離れてしまった。ごそごそと、何かを漁る音がする。
 いつもなら、俺が拒むのも構わず好き勝手やってくれるのだが。やはり、不二は俺よりも杏を選んだということなのだろうか。

 それを見たのは三日前。偶然だった。
 杏は昼から友達と遊びに行くと言って、嬉しそうに出かけていった。いつもなら誰と遊ぶと告げるのだが、そのときはそれが無かった。だから、少々おかしいとは思っていたのだが…。
 グリップテープを買うために、夕方にスポーツショップに行ったのがいけなかった。そこで、楽しそうにラケットなどを見ている杏と不二を見つけた。杏はいつもより笑顔が多かったし、不二は…不二の笑顔は、俺に見せているものと全く別の種類のものだった。もっと優しい、慈しむかのような笑み。
 その場で逃げてしまえばよかったのかもしれないが、余りにも衝撃的な場面に、俺は足が動かなくなってしまっていた。そんな俺に気づいた二人は、含み笑いを見せ手を降ると、それだけでショップを出て行ってしまった。言い訳も、何も言わずに。
 そして今日。以前からの約束を断れなかったため、不二は俺の部屋に遊びに来た。本当は、杏と一緒に居たいだろうに。

「忘れないうちにね。はい、これ」
 俺から本を奪うと、不二はリボンで飾られた包みを差し出した。突然のことに訳が分からずにいる俺に、しかたないな、と不二が呟く。
「自分の誕生日くらい憶えてなよ。はい。誕生日プレゼント」
 俺の手を取り、しっかりと包みを持たせる。それと不二の顔を交互に見つめる俺に、不二は微笑った。
「大変だったんだよ。君って結構無欲だからさ。欲しいものが分からなくて。お蔭で、一日中杏ちゃんを付き合わせちゃってさ。悪かったかな、と反省したよ」
 でもそのかわり、君が喜ぶものを買えたからさ。
 包みを指差すと、不二は早く開けろと目で訴えてきた。頷いて包みを開けかけ、その言葉の意味をようやく理解する。
「なら、三日前に俺が見たのは…」
「そうだよ。プレゼントの買い物に付き合ってもらったの。だから、君が怒るようなことは何もないんだよ」
 ね、と微笑うと、不二はまたキスをしてきた。また顔が赤くなったが、今度は隠さない。
「事情は分かったが、いまいち納得は出来ないな」
「……橘?」
「そういう誤解をさせるのが悪い。俺はこう見えても欲が深いんだ」
 不二の肩を掴み引き寄せると、自分からキスをした。何が起こったのか分からない、と言ったような顔をしている不二に、微笑う。いつもとは立場が逆だな、と思った。
「橘、それってどういう…?」
「さぁな。そのくらい自分で考えろ。さーて、プレゼントを開けるかな」
「あっ、ずるい。ねぇ、どういう意味なの?橘ってば…」
 まぁこういうのも、たまにはいいだろう。もしかしたら、これもプレゼントのひとつなのかもしれない。
「あ。不二」
「何?」
「プレゼント、サンキュな」
「ケチー」





今後の展開としては↓
「教えてくれないと襲っちゃうよ?」
ってな感じで、橘サン、喰われます(笑)
タイトルはプレゼントの中身。まぁ、中学生なんでね。
つぅか、橘サンが料理をするとは…今日の今日まで知りませんでした。
文章を書くのに必要な箇所しか見ないんですよ、20.5巻って。
兎に角、誕生日オメデトウ!
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