Holiday?


 今年は平日。去年も、平日。
 ルドルフに来て約2年。オレの誕生日はどっちも平日だから、家には帰れない。去年はその前の週に帰って姉貴特性のバースデイケーキを食ったけど。今年は帰れなかった。この後も、3月までは帰れそうにない。テストあるし。
 つっても、それまでは別に誕生日なんて大して有り難味もなく過ごしてたから。まぁ帰れなくてもしょうがねぇかな、とは思ってたんだけど。今年はちょっとワケありで。折角、兄貴との誤解がなくなって、また昔のように迎えられる誕生日。なのに、帰れないなんて、淋しすぎる。
 とか思いつつ寮の部屋のドアを開けたら。そん中から、何かが突進してきた。
「なっ」
「裕太。お帰り」
「兄貴、なんで…?」
「だって、明日は裕太の誕生日じゃない」
 いつの間にか背中に回されていた手を解き、かわりにオレの腕を掴むと、兄貴は微笑って言った。そのまま笑顔が近づいてくるから。
「あーっ、ちょ、待て」
 兄貴の額を押し、奥へと連れて行くと、オレは急いでドアを閉めて鍵をかけた。
「ったく。誰かに見つかったらどーすんだよ。怒られんの、オレと兄貴だけじゃないんだぜ?」
「寮長の観月も、だっけ?いいよ、あいつは」
「あのなぁ。兄貴がよくても、オレが駄目なんだよ。その後の練習メニューに、無茶苦茶なこと追加されたら困るだろ?」
「その時は僕がなんとかするよ」
「いや、だから、見つからなけりゃ端からそういうことにはなんねぇから」
 クスクスと不気味に微笑う兄貴に、オレはそう言うと溜息を吐いた。いい加減、観月さんも反省してるんだし、許してやればいいのに。オレだってもう、怒ってねぇんだし。それに、観月さんとのことがなけりゃ、兄貴がオレのことどれだけ大切にしてたかなんて気付かなかったわけだし。なんて。こんなことは今まで何度も兄貴に言ったけど。兄貴は全然聞き入れようとしなかったから。きっと、もう無駄なんだろうな。何を言っても。
「ま、いいや。でさ、裕太。明日、お誕生日でしょう」
「家には帰らねぇからな。部活もあるし、テスト近いし」
「うん。だから、僕が泊まりに来てみたんだけど」
「………は?」
 兄貴の言ってる言葉の意味がすぐには分からずに妙な声を上げると、そのタイミングで口を塞がれた。突然のことで思わず抵抗しそうになったけど。鍵をしっかりとかけたことを思い出し、オレは兄貴のされるままにした。
「あれ?抵抗しないんだ。さっきは拒んだのに」
「……さっきは誰かに見られるかもしんなかったから」
「見られるの、嫌?」
「…………オレ、兄貴と違って変態じゃねぇし」
「そっか。そうだよね」
 クスクスと微笑いながら頷くと、兄貴はオレの手を引き、ベッドに座った。オレもその隣に座る。
「で、さ。僕は誰よりも早く裕太におめでとうを言いたいんだよね。去年とか一昨年とかはほら、色々あって、言えなかったから」
「それでなんで、泊まりに来るんだよ」
「そうすれば、日付変わったら一番におめでとうって言えるでしょう?」
「って。何してんだよ」
「いやぁ、カウントダウンの準備を、とね」
 そう言ってキスをすると、兄貴はオレの肩を掴んでベッドに押し倒した。既にシャツのボタンは外されてたから、指でなぞるだけで簡単に肌蹴ちまう。別にそれが嫌ってわけじゃねぇし、嬉しいんだけど。でも、ほら。
「オレ、明日も学校あんだけど。ってか、兄貴だって学校あんだろ?」
「僕は、後は卒業するだけだから。明日は休日にすることにしたんだ。ね、裕太も休んじゃおうよ」
「っれじゃ、家に帰ってんのと同じじゃねぇかよ」
「違うよ。こっちの方が、スリルあるじゃない。ほら、そんなに暴れると、僕がいるのバレるよ?」
「…………しょうがねぇな、分かったよ。そのかわし、あんま激しくすんなよな」
「それは駄目かな」
「んでだよっ」
「だってほら、僕、変態だし」
「……………あ」





仮タイトルは365題の『腕の中で』だったんだけど。話しがそこまで行きませんでしたね。あっれー、おっかしいなぁ。
というわけで、この話の中ではまだ誕生日にはなってませんが(笑)。裕太、誕生日、おめでとう!
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