どのくらい “I love you”


「どうせオレのこと、好きじゃねぇクセに」
 オレをベッドに押し倒し、好きだ、なんて馬鹿の一つ覚えみたいに言ってきやがるから。オレは兄貴を睨みつけると、言ってやった。
「何言ってるの。ちゃんと好きだよ」
 けど、兄貴はそんなのお構い無しに、また微笑いながら、好き、と囁くと、強引に唇を重ねてきた。強引、と言っても、それは始めだけで。
「っ」
 その甘い誘いを、拒むことなんて出来ねぇから。気が付くと、オレはいつも自分から兄貴を求めちまっている。
 この行為がどれだけ穢れたものなのか分かってんのに。止められない。それだけ、オレは兄貴が好きなんだ。
 なのにっ。
「嘘、ばっか。本当は、越前が好きなんだろっ」
 今出せる有りっ丈の力で、兄貴の唇を押しやると、オレは再び睨みつけた。こうでもしてないと、今にでも伸ばした腕を折って兄貴を抱きしめたくなっちまうから。
「このベッドだって、オレがいないときは越前と使ってんだろっ」
 兄貴が越前を気に入ってたのは知ってたけど。越前を見るその目が優しいのは知ってたけど。付き合ってるなんて噂があるのは知ってたけど。
 実際に、この目で見るまでは、信じてなかった。信じたくなかった。
「この間、二人で出掛けてるの見た。先輩と後輩とか、そんな風には見えなかった。越前の事を一番好きだって言ってるのも聞いた。オレのこと好きだって。あれは嘘なんだろ?ただ兄貴は、セックスしたいだけなんだろ?」
 少しでも勢いを止めたら泣いちまいそうで。オレは一気に言葉をぶつけた。
 けど。もう全てを吐き出しちまったから。案の定、オレの腕は折れ、兄貴の体が圧し掛かってきた。
 再び、唇が触れる。
「そっか、見られちゃったか」
 服を脱がすように指を動かしながら、兄貴は言った。その顔には、動揺なんてもんは微塵も無く、寧ろ愉しげな笑みが浮かんでいた。
「やっぱり、兄貴は」
「好きだよ。リョーマのことが。一番、ね」
「っ」
「でも、裕太も好きなんだ。これは、本当だよ」
 言うと、兄貴はオレの体を這う指の跡を、舌で辿り始めた。
 もう、拒める力なんてとっくに奪われちまってるから。せめて口だけは、と、深呼吸を繰り返し、上がった息を何とか整えようとした。けど、結果は散々で。吐く息はどれも、甘いものが混ざっていた。
 それでも、何とか言葉を紡ぐ。
「オレは、二番ってわけ、か」
「残念、ハズレ」
「はっ。この期に及んで、一番とかほざくんじゃねぇだろうなっ」
「まさか。そんなことは言わないよ。裕太にだけは嘘は吐かないって、決めてるんだ」
 クスクスと笑いながら、下腹部まで到達した舌を今度は逆に辿ると、兄貴は顔を上げた。触れるだけのキスをして、真っ直ぐに、オレを見つめる。
「じゃあ、何なんだよ」
 その真剣な目に飲み込まれないように、強く睨み返す。と、兄貴は口の端だけで微笑いながら、さらりと残酷なことを言いやがった。
「十三番目、だよ」





タイトルはチャゲアスですが。何となく気に入ったので使っただけで、内容は歌詞と伴っておりません。
裕太、可哀相。
えーっと、365題『No.13』にコメントをくれた方に捧げたいと思います。
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