present
「誕生日、おめでとう。裕太」
「あり、がとう」
 笑顔で渡されたプレゼント。その中身は恐らく、オレがずっと欲しがってたテニスシューズだと思う。
 それが欲しいなんて兄貴には一度も言ってないけど。その色まできっと間違いはない。いつだってそうだ。兄貴は、オレの欲しいものを分かってる。だからこそ、プレゼントをもらって憂鬱になる。
「どうしたの?裕太」
「……兄貴。は、今度の誕生日、何が欲しい?」
「何も要らない、かな。その気持ちだけで充分だよ」
 毎年変わらない答え。その言葉に、オレはプレゼントで口元を隠しては溜息を吐いた。
 そう、兄貴はオレの欲しいものをちゃんと分かってる。だけどオレは、兄貴の欲しいものが分からない。
 本当に欲しいものが無いのかといえば、どうもそういうわけじゃないらしい。その証拠に、親父やお袋、姉貴には、訊かれれば欲しいものをちゃんと答えている。と言っても、姉貴に対しては手作りケーキだとか日帰り旅行とかあまり金のかからないものだけど。
「なんかあるだろ。オレだって兄貴のためにちゃんとお年玉溜めてあるんだぜ?遠慮なく言えよ」
 以前、兄貴にどうしてオレには欲しいものを言わないのかと訊いたとき、裕太はすぐにお年玉使っちゃうからね、と言っていた。だからそれ以来、オレはもらったお年玉を一月中に使い切らず、ちゃんと兄貴のためにとって置くようになった。もう4年分のプレゼント代が、専用の貯金箱に溜まってる。
「本当に、何も思いつかないんだよ」
「嘘だ。欲しいものちゃんとあるクセに」
「欲しいものはあるけど、裕太から貰いたいものは何にも無いんだ。その気持ちだけで、充分だと思えるから」
「……なんだよそれ」
「そうやって。僕のために何かしようって思ってくれることが、何よりのプレゼントだってことだよ。だから、懲りずに来年も同じこと訊いて?」
 そう言うと、兄貴は本当に嬉しそうに笑った。その表情に、呆れなきゃならないはずのオレは顔が赤くなってしまって。
「わけわかんねぇよ」
 口の中で呟くと、オレは兄貴に顔を見られないよう、俯いてプレゼントの包装を解くしかなかった。




一応、不二誕のために書いた物語です。
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