pair


 会いたい、なんて恥ずかしくていえねぇが。会いたい、とは幾度となく思う。そんな時、俺は決まって学校をサボる。

「……ったく。何で今日に限って来ねぇんだよ」
 二本目の煙草に火を点け、窓の外を睨む。溜息にも似た煙を吐き出すと、俺は壁にもたれるようにしてその場に座った。
 学校をサボると、どういう情報網があるのかは知らねぇが、優紀にバレる。それは俺がテニスに関わってからだから、恐らく、ジジイか千石か太一か。まぁ、そこらへんの奴らだろう。一番怪しいのは、ジジイだな。俺を学校に来させて、掴まえようってな魂胆だろう。みえみえなんだよ。ったく。
 まぁ、ジジイのことはどうでもいい。
 俺が休んだという情報は、優紀から、その日のうちにアイツへと伝わる。自分が言ってもきかねぇからって。まぁ、最初はムカついたが、それも今は俺にとって都合のいいシステムになっている。
 学校サボれば、次の日の朝、アイツが来る。
 そう思って、俺は今日、いつもより早めに起きて待ってるってのに。
「来ねぇつもりかよ」
 煙草を咥え、制服の胸ポケットから小さな袋を取り出す。
 ずっと一緒にいるのに、お揃いのものがひとつもないのって、少し淋しいね。
 いつだったか、アイツがそう言っていた。そうだな、なんてあの時は頷いたが。考えてみると、恋人同士ってわけでもねぇんだし、別に揃いのもんなんて持ってなくても可笑しくなんてねぇ。寧ろ、持ってるほうが少し気持ち悪ぃ。
 だがしかし、だ。
 アレがもしかしたらアイツの気持ちだったのかもしれねぇとも思う。ずっと一緒に、なんて今まで意識はしていたが俺もアイツも口にしたことなんてなかった。それをあえて言葉にしたと言う事は、だ。
 これがもし、俺の自惚れだったり勘違いだったりしたら滅茶苦茶恥ずかしいが。それはそれで、俺から切り出せばいいってだけの話だ。
「………上等じゃねぇの」
 袋をポケットにしまい、煙草を揉み消す。
 今日は俺様が迎えに行ってやろうじゃねぇのよ。俺様に待ち惚けを喰らわせた罰だ。それに、今日は――。







「あれ?亜久津、どうしたの?」
「どうしたの、じゃねぇってんだよ。ったく。ほらよ」
「……何?」
「今日は河村の誕生日だろうが。やるよ」
「……ピアス?そう言えば、亜久津、ピアス開けたんだ。アレだけ嫌がってたのに」
「うるせぇ。てめぇのためだよ」
「うん?」
「揃いのもんが欲しいって言ってただろーが。忘れてんじゃねぇよ」
「そっか。そうだったね。憶えててくれたんだ。亜久津、ありがとう」
「……お、おう」





タカさん、お誕生日オメデトウ!
って、亜久津の話になってしまいましたけどね(笑)
365題『片方だけ』(ピアスが――)、『待ち惚け』(サボらないように言いに来るタカさんを――)と。二つのコメントをくっつけてみました。
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