Will


 帰り道。ふと頬に当たる冷たい感触。雨かと思ったけれど。
「わぁ、見てみて、大石!」
 腕を引っ張り声を上げる。おれは促されるまま、視線を空に向けた。
 降って来るのは、銀色の花びら。
「……雪、だ」
 言葉に出すと、その冷たさが増した気がした。空いているほうの手で、頬に落ちた雪を拭き取る。
「どーりで今日は朝からずーっと寒いと思った。あー。寒い、寒いっ」
「ち、ちょっ…。英二っ!」
 組んだ腕をぎゅっと掴まれ、おれはうろたえた。こんなところ、誰かに見られたら…。
「なぁ、大石。寒いからさ、早く大石ん家に行こっ!」
 離すように咎めようと思ったけど、楽しそうな笑顔でいう英二にそんなこと出来る筈もなく。
「…まぁ、いっか」
 溜息をひとつ吐く。
「そうだな。寒いから、早く帰ろうか」
 言って、微笑って見せると、おれは英二の手を強く握った。

「それにしても、雪降るの早すぎだよなー。このままじゃ、クリスマスまでに、雪、降り尽くしちゃうんじゃない?」
「あはは…。そんなことはないと思うけど」
 …クリスマス、か。
「ん?どうしたの、大石?」
「いや…ちょっと。去年のクリスマスを思い出しただけだよ」
「そっか。確か、去年はホワイトクリスマスだったんだよね」
「ああ」
 去年のクリスマス。冬休み中とはいえ、部活はあるのだが。竜崎先生のはからいで、テニス部でのクリスマスパーティーをやった。その帰り道。英二と一緒に歩いているとき、今日みたいな、綺麗な雪が降ってきた。
 そのときは、クリスマスを英二と一緒に過ごすことが出来ただけで嬉しかったのに、初雪まで一緒にみることがで来て、二人して照れくさい感動を味わってたっけな。
 今年はどうなんだろう?今年も、去年のように英二と一緒にクリスマスを過ごせるのだろうか?
 空に見上げ、感傷に浸っていると、突然、腕が軽くなった。我に返ったおれは視線を落とす。
「…今年も」
 言いかけて、おれよりも2,3歩前へ進むと、英二は振り返った。
「今年も、一緒にいたいね。クリスマス」
 イッショニイタイ。その言葉に、胸が熱くなる。英二も、おれと同じ考えをしてくれていたことが嬉しい。
 笑みを見せる英二に、おれは黙って頷いた。
「そうだ。また、みんなでさ、クリスマスパーティーやろうよ。俺たち引退しちゃったけどさ、去年みたいにテニス部のみんなで。そーだな。去年はクリスマスだったから、今年はクリスマス・イヴ!」
「………。」
 ミンナデ、か。
「…駄目?」
「い、いや。駄目じゃないよ。そうだな。やろうな。」
 上目づかいで訊いてくる英二の頭をなでながら、おれは笑顔で返した。嬉しそうに、英二が微笑う。おれがココロの奥底で、大きな溜息を吐いているのを知らないで。
「でさ。その後…」
 言いかけて、英二は自分の頭に乗せられたおれの手を取った。息を吹きかけ、温めるようにして、両手で握る。
「……英二?」
「その後、さ。大石ん家、行っていい?」
「……え?」
「俺、大石と二人でクリスマス、過ごしたいんだ。俺ん家だと、姉ちゃんとか煩いし。だから、さ。大石ん家で。……駄目、かな?」
 おれの手で、自分の顔を隠すようにして英二が言った。多分、照れているのがバレないようにするためなんだろうけれど、はみ出ている耳は、寒さ以外のもので真っ赤に染まっている。
 そんな英二が可愛くて、おれは思わず吹き出してしまった。
「あーっ、なんだよ、おーいしっ。笑うなよなっ。俺、真剣なんだから」
 頬を膨らせ、おれの手を投げ付けると、背を向けてスタスタと歩き出した。慌てて、その後を追う。
「おい、待てよ英二」
 小走りしないと追いつけないスピード。おれは何とか英二の腕を捕らえると、そのまま自分の方へと引き寄せた。短い口付けを交わす。
「駄目なんて言ってないだろ。いいよ、英二。クリスマス、一緒に過ごそう」
 唇を離し、微笑って見せる。英二は顔を真っ赤にしながら、おれの胸に顔をうずめた。
「なんだよぉ。おーいしの馬鹿。俺、許さないかんね。そんな意地悪な大石、大っ嫌いだ」
 大っ嫌いって…。
 言いながらも、英二はおれに張り付いたまま、一向に離れる気配を見せない。
 やれやれ。
 おれは気づかれないように小さな溜息をつくと、英二の頭を優しく撫でた。
「ごめん。謝るから。なあ、英二。機嫌、直してくれよ」
「やーだ」
「どうしたら、機嫌直してくれるんだい?」
「…今年も、来年も、再来年も。その先もずーっとずーっと、俺と一緒にクリスマスを過ごすって約束してくれたら許してやってもいい」
「………え?」
 今、何て言った?おれの聞き間違いじゃないよな?
 黙っている俺を見て、英二はまた顔を膨らせた。…否定、と思ったらしい。
 ということは、さっきの言葉はおれの聞き間違いじゃないってことか。
 おれは深呼吸をすると英二の手を肩を掴んだ。微笑って見せる。…なんか、照れるけど。
「………おれでいいなら、喜んで」





最近のジャンプを見てると、大石が腹黒く…ぢゃなかった。攻めに見えて仕方ありません(笑)
とはいえ、別にどっちでもいいんだけどサ。受けでも攻めでも。ヤらなければね。
あーあ。クリスマスか。
でもさ、大石の家に行ったら行ったで、妹いるんじゃ…ι

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