448.ピストン運動(はる星)
※セラムン『non title 8(はるみち)』と関連



「そんなわけで、持ってきた」
 今の会話の、どこをどう繋げたら、そんなもんを持ってくることになるのか。納得できずに見つめ返したオレに、天王はしょうがないやつだなとばかりに大袈裟な溜息を吐いた。
「折角買ったのに使わないんじゃ勿体無いだろ?」
「……お前、貪欲なのな」
「馬鹿。僕に使うんじゃない。お前に使うんだ」
 なんだったら、変身してもいいぜ。服の上から自分の腰にそれをあて、にやりと笑う。サディスティックなその表情に、オレの体は寒気と同時に嫌な熱を覚えた。本気なのか。自分に問いかける。
「お前、マゾなのかサドなのかわかんねぇな」
 自問の答えを聞きたくなくて、思考の矛先を天王に向ける。そうだ。オレとの関係は、どうしてもマゾヒストとしか思えない。なのに。精神的にはマゾで、肉体的にはサドだとでもいうのだろうか。なんだそりゃ。
「僕がそんな枠組みにあてはまるわけないだろ。いいから、変身するのかそのままか。さっさと決めろ」
 腕を掴まれ、有無を言わさない力でベッドルームへと連れられる。大して広くない部屋だ。数秒と立たず、天王はオレを押し倒した。好奇心に満ちた目を閉じ、唇を押し当ててくる。
「そのまま、で、いいんだな?」
「拒否権は?」
「無い。聞いた話だと、女のエクスタシーは男のそれと比較にならないほどいいらしいぜ」
「お前はどうなんだよ」
「僕に比較出来るわけ無いだろ。ただ、僕としては。変身してもらった方がみちるとするときの練習になるかな」
 天王の言葉に、無意識にインカムに伸びていた手から力が抜ける。
 あの人の代わりは誰にも出来ない。それは天王が何度もオレに言い続けていることだ。擬似恋愛ですらない関係。だとしたら。
「やりたきゃやれよ」
「変身、しないんだな」
「してやらない」
 オレの真意に、気付いたのかどうかは分からない。けど、天王は暫く考え込んだあと鼻で笑うと、わかった、と呟いた。
 そして、こんなことは初めてなんじゃないかと思えるほど丁寧にオレの服を脱がすと、本当に初めてオレを充たすことを目的に指先を動かし始めた。
(2011/03/15)
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