7月7日、晴れ -ANOTHER SIDE- |
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あいたくて。 あいたくて。 あえなくて…。 長い沈黙の後、よく耳にする、けれども知らない女の声がした。発信音がする前に、オレは携帯電話を切った。クシャクシャのメモと携帯を机に置き、オレはベッドへと体を放った。 「もう、寝てしまっているのかもしれないな」 呟いて、窓の方へと視線を移す。視界に入るのは、カーテンレールに掛けられたてるてる坊主、満天の星空、そして……小さな笹と短冊。 七夕なんて行事。今まではオレとは縁の無いものだった。だが、去年。不二に無理矢理に誘われて、2人だけで七夕という行事をやった。何処からそんな知識を得たのか、不二は飾り1つ1つに込められた意味を丁寧に教えてくれた。そして気がつくと、オレの方が飾り付けに夢中になっていた。 あの時、短冊に込めた思いは『全国制覇』。 きっと、この願いは今年叶うだろう。望んだ本人が不在のままで。 いや、オレはそれまでにはきっと戻る。不二に全国制覇を体験させてやると約束したのだから。その為に、不二は今、オレを全国へ連れて行こうとしてくれているんだ。 そうだろう、不二。 天の川に向かって問いかけてみるけれど、無論、返事なんてない。 こんなことなら、あいつに連絡先を教えておけばよかった。 後悔しても、今更だ。 もう1度、電話をしてみるか? 起き上がると、オレは机に置かれた携帯を手に取り、リダイアルボタンを押した。 が、呼び出し音が鳴る前に、オレは電話を切ってしまった。もしかけて、不二が出なかったら?などという問いが頭を過ぎったからだ。 溜息を吐き、椅子に座る。 あの時もそうだった。不二から、携帯番号を書いたメモを貰った時。 ここでオレが連絡先を教えて、もしかかってこなかったら、と。そんなくだらない不安から、不二に連絡先を教えることが出来なかった。そして、メモがありながら今日まで連絡をしようとしなかったのも同じ理由だ。 結果は、やはりと言うかなんと言うか。不二は電話に出なかったわけだが。 今日何度目かの溜息を吐くと、オレは部屋の明かりを消した。月光を頼りに窓を開け、短冊に手を伸ばす。 不二も、今頃はこうしてあの空を眺めているのだろうか?去年と、オレと同じ想いをこの短冊に込めて。 「『ずっと、不二と一緒に居たい』」 書いてある文字を指でなぞり、声にする。 不意に、笹が風で音を立てた。オレにはそれが、笹が頷いているように見えた。 「奇跡を起こしてくれるとでも言うのか?」 声に出し、問いかけてみる。また、笹が音を立てた。 「……ありがとう」 呟いて、短冊から手を離す。 笹を一度だけ撫で窓を閉めると、携帯を手に取りベッドへと体を投げた。 7月7日の終わりまで、あと1時間。奇跡が起こるまでのタイムリミット。 小さな光の中にある数字を眺めていると、突然、不二の気持ちが理解った。不二は、オレにメモを渡してから今まで、ずっとオレと同じ、いや、それ以上の不安を抱えていたことを。何故今まで気づかなかったのか。その方が不思議だ。 「つくづく間抜けだな、オレは…」 自分だけが不安がって。逃げてばかりで。 奇跡が起こらないのなら、自分で起こせばいい。 体を起こし、携帯を開く。ボタンに触れようとした瞬間、部屋の静寂は電子音で掻き消された。 ――もしもし。手塚? あいたくて。 あいたくて。 あいたくて…。 |
一年前に書いた『7月7日、晴れ』の手塚サイド。 うちの手塚は何かとズルイですね。不二が絡むと臆病になるみたい。 七夕と言えば、やっぱりドリカムだよね。あー。サントラ、友達に返してもらっとけば良かった。 仕方が無いのでアルバムから一曲リピートです。ってか、映画、TVでやってくれると信じてたのになぁ。 |
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