所有 |
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「怒ってる?」 「何に」 「何にって……」 越前の目を見てたら彼に会いたくなって。追いかけるように部屋に押しかけて。でも彼は僕と会話をするどころか目を合わせようとすらしてくれなくて。 だからてっきり怒ってるのかと思ったんだけど。 そうだよね。彼が、怒るはずはない、か。 「ごめん」 「何故謝る?」 「突然、押しかけて」 呟くと、何だか情けなくなって。背を向けたままの彼の背にもたれるようにして額をあてた。 「迷惑、だよね。もう少ししたら、帰るから」 「……別に」 言葉とともに、彼が離れていく。 顔を上げると、目は僕を見てはいなかったけど。それ以外は僕に向いていた。 「手塚?」 「別に、迷惑だとは。思っていない。ただ、予想してないなかったから。分からない、だけだ」 「分からない?」 「お前が、何故ここにいるのか」 越前と帰ったのではなかったのか、と。ようやく僕を見た彼の目は言った。 「越前を、見てたら。君に会いたくなって。……ねぇ、手塚。もし本当に越前が僕を奪おうとしたら。君は」 「オレはそれを阻止することは出来ない」 「……そう」 ああ、やっぱり。分かっていたことだけど。それでも多少は落ち込む。 彼は、そうまでして僕を留めておきたいわけじゃないんだ。結局は、僕が彼の傍にいたいだけ。 「だが。越前はオレからお前を奪うことは出来ない」 「……え?」 何、を言ってるのか。彼の言葉に僕は項垂れかけていた顔を上げた。目を合わせる僕に、彼が目をそらす。 「お前は誰のものでもない。誰のものにもならない。そうだろう?」 「半分は正解だけど。半分は、違うよ」 彼の視界に映るよう、身を屈ませて覗き込む。その目をしっかりと捉えると、僕は彼を見つめたまま唇を重ねた。 「不二?」 「僕は、君のものだ。例え君が僕を手放したとしても、ね」 「……オレは。もしお前をこの手に出来るのなら、決して放したりはしない」 放したりは、しない。繰り返しながら、僕の背に爪を立てる。 「けど、お前はオレのものにはならない。決して」 抉られて、血が出てるんじゃないかと思うほどの痛みが走る。けど僕は、彼の体を突き放そうとはしなかった。黙って、次の言葉を待つ。 そのまま、長いのか短いのか分からない沈黙が過ぎた。彼の手は緩むどころか強さを増していき。多分、いや、確実に僕の背にはみみず腫れの後が。下手したらそれだけじゃなすまないかもしれない傷が出来ているだろう。 「……お前が、オレのものなのではない」 呟きのような、声。ずっと息を詰めていたのかもしれない。彼は思い切り息を吸い込むと、僕の耳元に唇を寄せた。 「オレが――」 彼の言葉に驚き、思わず体を離す。目が合うと彼は、耳まで真っ赤にして僕から目をそらした。 「手塚。それって、どういう……」 「そのままの意味だ。だから、えちぜっ」 彼の言葉を最後まで聞かず。僕はその口を塞いだ。勢いよく飛び込んだから、彼は床に肩を打ち付けてしまったけれど。僕の背中の痛みに比べたら、と謝ることはしなかった。 それに、言葉を発する程の余裕が、今の僕たちにはなくなっていた。 |
手塚の言葉を入れるタイミングを逃しました。 最後、手塚が不二に何と言ったのか。まぁ、ご想像にお任せします(笑) 不二←リョ『宣戦布告』のその後だと思ってください。 |
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